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ビッカートン、あるいは愛すべきジョンブル魂の発露

小径車の人気も、もはやブームではなくジャンルとして定着してきた感のある昨今。とはいえこの小径車は相当変態レアな部類でしょう…。

Bickerton Portable Phase1_01
当店のK君がコレクションしているビッカートンです。実車を6台、部品取りを1台、パーツ多数を保有する彼は熱心なコレクターなのかタダのバカなのか…。とは言え、国内でここまでBickertonをフォローしているのは彼だけでしょう。なにしろ、幾度も渡英してビッカートンを収集するのみならず、英国に滞在しているときの住まいが大御所コレクター、ベイカー氏のご近所さんという縁もあり、自宅にも何度か伺ったことがあるらしい。そしてフィールドワークと称して、プール、スワネージ、ウェアラムと言ったビッカートンゆかりの土地を、ビッカートンに乗って飲み訪ね歩いています…。

Bickerton at Poole Bay
ハリー・ビッカートンが自転車を作るきっかけとなった出来事(後述)が起きた、Isle of Purbeckの海岸での一枚。この個体は2型のSA5速仕様です。

ブロンプトンを設計したアンドリュー・リッチー氏自ら元ネタであると公表したことで、最近は一部でも知られるようになったビッカートンは1971年、ロールスロイス(車ではなく、航空機エンジンの方です)のエンジニア、ハリー・ビッカートンによって生み出されました。彼は1922年に16歳でロールスロイスで見習いとして働き始めて以来、たたき上げの技師として、第二次大戦中には名機スピットファイアに搭載されていたMerlinエンジンの高出力化に多大な貢献を果たします。戦後、彼は発明家として第2のキャリアをスタートさせ、多忙な日々を送っていました。ところが1970年、彼は休暇先のIsle of Purbeckで交通事故を起こし、3年間の免許取り消し処分を受けていしまいます。彼は突如として、自由な移動手段を失ってしまったのです。そこでエンジニアの血が騒いだのでしょう、約1年の開発期間を経て生まれたのがこの折りたたみ自転車。車を使わずとも、公共交通機関を駆使して自由に移動できるツールを求めた彼の、発明家らしい回答なのです。

アルミボックスのメインフレームに、BBシェルからフォーク、ハンドルまですべてアルミ製。しかもどこにも熱が入っておらず、すべてがボルト止めか圧入によって作られているという、驚きの設計思想です。アルミに熱を入れないという発想は、同じ航空機をルーツとする三菱重工業が1946年に発表した「十字号」に通じるものを感じます。十字号の設計は、かの一式陸攻を設計した本庄季郎氏。氏は当時、世界最先端とされたイギリスの自転車を詳しく調べられたそうです。その結果、画期的なアルミボックスフレームやセパレートハンドルを備えた十字号を生み出すのですが、その25年後に、イギリスで同じような設計思想を持った折りたたみ自転車が、同じ航空機にルーツを持つ人物から生みだされるとは。自転車の歴史は、知るほどに面白いです。

最終的に、ビッカートンは1991年まで生産されました。1987年以降は、マーケティングに長けた息子さん(現在も英国自転車協会のエライさんです)が指揮を取っていたせいかコストダウン化が進み、チープな外見のモデルが多いのはちょっと残念です。

このビッカートンの特徴は、20年の長きにわたって基本設計を変えずに生産されたことと、その中でフレームのディテールとパーツのアッセンブルが微妙に変化し続けていること。そして唯一無二のデザインと独特な乗り心地。言い換えれば、男性諸氏のコレクション魂を刺激してやまない、趣味性の高いモノに共通の特徴を心憎いまでに備えているのです。ある意味では、イギリス製工業製品の典型ともいえますね。クルマから飛行機、陶器、古着に至るまで、英国モノ大好物のK君がコレクションに血道をあげるのも分かる気がします。

製造元が発行していたカタログ(1988年頃)には、オリジナルモデルの「クラシック」、20インチホイールの「カントリー」、そしてDAHONのDavid Hon博士が設計した「カリフォルニア」の3つのタイプが掲載されています。クラシックはシングル、3速、5速、カントリーには3速、5速、6速(外装)のオプションがありました。また、特徴的な折りたたみ機構のヒンジには前期と後期(カントリーは後期ヒンジのみ)が存在します。とここまでは結構知られています。

「しかーし!」とK君は言うのです。

彼によれば、実はヒンジの構造は3通りあるのだそうで。そしてカリフォルニアを除くオリジナルのフレームだけでも3通りのメインフレーム形状、3種類のリア三角、2種類のシートチューブ素材、3通りのシートチューブとメインフレームの固定方法、3通りのフォーク、そして4つの製造元があるとのこと…。「実はステムの構造も2通り、ハンドル幅も2通りあって、それにフェンダーは4種類あって…」。K君、もうお腹いっぱいです。じゃあ結局どれが一番いいの??

「僕が『1型』と呼んでいる初期型ですね」

やっぱり何でも初期型なんですねぇ。それが今回の個体。これまで10台以上のビッカートンを所有し、200台以上をチェックしてきた彼をして「最も当たりの個体」という自信の一台です。

Bickerton Portable Phase1_03
一番設計者の気合が感じられるハンドルまわり。気合が空回り、もとい入りまくった(ついでにピンも刺さりまくった)ビレットのステム、その特徴的なロングネックのハンドルバー。ときどき街中で「チョッパー」と言われますが、うーん、その表現はちょっと違う気もします…。

Bickerton Portable Phase1_02
ネジの一本までもオリジナルのマイナスネジです。ちなみに、この個体のメインフレームは貴重な初期モデルの2型。これ以降のフレームよりも、全長が少し長いのです。

Bickerton Portable Phase1_04
タイヤも、これまたオリジナルのUK製ミシュラン。悩みは、英国でもスペアが超希少なこと。サイズ的には、後輪はシュワルベのブロンプトン用が使えるのですが、今年からなんでしょうか、サイドに「Brompton」て入っちゃってるんですよね…orz。

Zefal Bande anti-crevaison
そんなタイヤの経年劣化によるパンクを防止するため、当店お勧めのゼファール製「フンドシ」をタイヤとチューブの間に挟んでいます。副次効果として走行性も向上しています。もちろんサイズ別に在庫あります◎

さらにこの個体のスペシャルな部分を…。

Bickerton Portable Phase1_05
Bickerton Portable Phase1_06
なんと彼もまだこの1台しか確認していないという、サンツアーの内装3段変速機仕様です!!デフォルトは当然Sturmey Archerなんですが、サンツアーの方が軽い上、メンテフリー化を実現していて使いやすいのです(でも専用工具がないとフリーホイールが外れない)。さらにペダルやクランクなど、各パーツのグレードが異様に高いのも1型の特徴。調子のいい1型を知ってしまうと、2型中期以降のビッカートンはもはや…なのだそうです。彼が所有する他のビッカートンも見たことがありますが、確かに見た目のオーラが全然違います。

Brooks ATB Saddle Purple
独自規格だらけであまりカスタムする所がない自転車ですが、サドルを交換しました。ブルックスのATB、スプリングが紫色というオプションがあったのです。イギリスっぽいです。パンク魂を感じます(笑)。

どうです?そこのあなたもビッカートンに乗りたくなったでしょ(笑)

しかしながら、ここまでブログで紹介しておいてアレですが、一自転車ショップとしては、とても万人に勧められるような自転車ではないことは先に申しあげておきます。よしんば海外のオークションで入手しても、100%そのまま乗ることができないのです(ベストの状態を知らなければそれでも「しばらく」乗れますが)。一番のウィークポイントはヘッド周り。オリジナルのヘッドセットはプラスチック製な上、ヘッドチューブも例によって圧入となれば、それもむべなるかな。さらに独自規格のフォーククラウンが弱く、前期型も後期型も、構造上徐々に圧入が緩くなってガタガタになるのが避けられません。K君も一度、走行中にボッキリ折ってます。前輪が道路の反対側まで飛んでいき、夕飯の食材が道路に散乱したらしい。本人は向こうずねを血だらけにしただけで済んだのが不幸中の幸いってもんです。その他にも、通称「後期型」のヒンジをはじめとして致命的に弱い部分がいくつかあり、つまりは知らずに乗っていると命の危険があるわけで。

でもブログで紹介した以上、タダでは済まさないのが当店の当店たるゆえん。なんとビッカートンのウィークポイントを強化するメニューを各種ご用意しています!!もちろん一切フレームに火を入れませんし、オリジナルを維持したまま!ヒンジやアルミピン、前輪のベアリングなどのスペアパーツもあります!さらにはくたびれたスターメ―の変速機もOHしちゃいます! よく噛んで味わえる自転車であれば、どんなものでもちゃんと料理してさしあげるのが当店のポリシーですっ!

ちなみに強化メニュー採用第1号車はK君のビッカートン。彼はこれで片道25~30km乗って店に来ます。所要時間も1時間ちょっとらしい。もう1年ほど、ほぼ毎日乗っているそうですが、パンク以外はノートラブルです◎

この前は鎌倉で丸一日、40kmほど乗り回していたとのこと。

Bickerton bicycles in Kamakura
文学館でのショット。木漏れ日がキレイですねぇ。ちなみに一緒に写っているレッドのビッカートンも彼のコレクションで、英国で30年来のコレクターから入手したもの。なんと本国でもこれを入れて2台しか確認されていない、最強のレアモデル!!そんなK君の夢は、幻の「0型」を手に入れることと、ビッカートンの本を書くこと。実は「0型」は2年前に一度チャンスがあったらしいのですが…。

まあ頑張ってくれたまえ(笑)

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2010-06-09 : 自転車アーカイブ : コメント : 0 : トラックバック : 0
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カワイイ顔した憎いヤツ。From 1970's

ふらりとお店にやってきたお客様。ヴィンテージのアロハシャツの下に、「ブルックリンブルワリー」のTシャツが素敵です。古き良きアメリカのカルチャー全般がお好きなのでしょう。

ファッションもさることながら、もっとおしゃれなのが彼の自転車。

Schwinn Le Tour01
SchwinnのLe Tour Ⅱです!オリジナル度高め、しかもビカビカです!!
お話を伺うと兄上のお下がりを、高校時代から乗られているそうです。ごらんの通り、たとえコロンバスSLXにフルカンパじゃなくたって、何十年もかしずかれた個体はこのような圧倒的なオーラを醸し出すんですね~
FDとダイナモは調整中につきはずしてあるとのことでしたが、ここまできれいなら誰も「欠品だ」とは思わないものです。

Schwinn Le Tour02
当時の砲弾型ライトがついているモデルに共通ですが、自転車に「顔」がありますね◎

Schwinn Le Tour03
「顔」のクローズアップです。若干フレアーなドロップハンドル、ワンポイントでブラスを使った軽合金(アルミとは言わない…笑)ブレーキレバー…。いやこの独特の空気感、素晴らしいです。かわいすぎます。

Schwinn Le Tour04
カンパコピーのローレット入りヘッドパーツ(シマノ製)にシュウィン刻印入りステム。何よりもライトステーの優美な曲線…。現代の自転車が失った何かが、この自転車にはしっかり息づいています。

廉価モデルであっても、職人によってちゃんと作られて、しかるべき値段で売られ、ショップとオーナーによってきちんとメンテされること。このプロセスがあって初めて、自転車がカルチャーとなるのだと思います。でも最近はメンテをする気も起きない、廉価というよりはただの安物が多いですね。悲しい現実です。自転車のムーブメントは来ているけれど、作り手も乗り手も(そして売り手も)ポーザーばかり…。

当店はガチンコのイタリアンロードオンリーだけではなく、実はこのような自転車も好きなのでした。この自転車見ながら、白ご飯3杯はイケます!

いや、素晴らしい自転車をごちそうさまでした。またどうぞいらしてください!

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2010-05-22 : 自転車アーカイブ : コメント : 0 : トラックバック : 0
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Author:hiphipshake
HIP HIP SHAKEオーナー。インダストリアルデザイナー、アパレルデザイナーを経て、ついに禁断の自転車趣味を仕事に…。前職の知識と経験を生かして、自転車の「ストリートクチュールカスタム」を提唱。リアルレーサー等、フレームの芯出しからパーツのオーバーホールやチューンナップ迄カッコよくて走れるヴィンテージバイクを多数制作中!

住所:東京都渋谷区神宮前3-36-26
電話:03-5410-5508
営業時間:13~19時
定休日:月曜(第2、3の土日は走行会・イベント等のため不定休)

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